活動報告

情勢学習

北南関係へのスタンス

 新型コロナウィルスが世界を飲み込んでいる。アメリカ大統領選挙やイギリスのEU離脱、さらには安倍政権の不祥事さえもコロナの波にのまれて、本来なら獲得したであろう社会的関心を得ていない。朝鮮半島情勢も例にもれず、報道などを通して目に触れる機会は減ったように思う。

 

  そんな中、それでも注目されたのが金与正党中央委員会第一副部長の談話だ。談話は2月28日に次いで3月2日に行われた朝鮮の合同打撃訓練に青瓦台が憂慮と中断を求めたことに対する原則的な批判で一貫している。韓国や日本のマスコミがかつて“ほほ笑み外交”の主役とこぞって取り上げたイメージからかけ離れた内容なだけにインパクトは十分だった。さらにそのわずか2日後の3月5日に青瓦台が金正恩国務委員長から文在寅大統領に親書が送られてきたとの発表があってからは、朝鮮の北南関係へのスタンスはローラーコースターのように乱高下し、その真意はどこにあるのかなどの論調が散見された。しかし、朝鮮のスタンスは一貫していて、金与正談話と国務委員長の親書は矛盾しないのだ。

 

  朝鮮の北南関係に対するスタンスは昨年4月の最高人民会議で発表された国務委員長の施政演説に集約されている。演説では“(南の政府は)いかなる難関と障害があろうとも民族の総意が集約された北南宣言たちを変わることなく徹底的に履行しようとする立場と姿勢をまず持たなければならない”としながら“民族共同の利益を侵害する外勢依存政策に終止符を打ち、すべての行動を北南関係改善に服従”させるよう訴えている。つまりアメリカとの同盟関係にばかり気を使い民族共同の利益を害する姿勢を改めるよう訴えているのだ。昨年末の党中央委員会12月総会にて北南関係に対する報道が一切ないのは、文政権が施政演説での訴えに一つも応えていないからだと推測できる。

 

   昨年末、国務委員長自ら金剛山に赴き、古くみすぼらしい施設を南側と調整しながら撤去するよう命じたが、その期限を2月中としたのは文政権に決断を、時間を区切って迫ったようにも見える(その後ウィルス拡散と関連して当分の間延期している)。

 

  しかし文政権は北南間で2018年9月に平壌共同宣言と共に「板門店宣言履行のための軍事分野合意書」を結んだにも関わらず、THAAD計画を“韓国型MD”に替えて事実上増強し、グローバルホークやF35Aという“斬首作戦”を遂行しうる戦略兵器を次々と配備している。そればかりか3月4日の空軍士官学校の卒業任官式で文大統領は“F35Aステルス戦闘機が390度空中旋回する素晴らしい祝賀飛行を見”て空軍の威容をたくましく思うと持ち上げ、今後も戦略的に“我が空軍の安保力量をますます強化することを約束”し、コロナ騒動で延期になっていた空軍による米韓軍事演習を中止するどころか4月20日から24日までの5日間にわたり強行するに至っている。

  

  朝鮮にしてみれば自らはアメリカと同調して対朝鮮戦力を増強していながら朝鮮の自衛的な訓練には憂慮や中止を求める姿は許せるものではないのだ。

 

 

  一方、朝鮮が目指すゴールは北南関係の改善と朝鮮半島の平和保障、さらには祖国統一であり、それは唯一「民族自主」によってのみ達成されるというスタンスはゆるぎない。そのため新型ウィルスの流行という危機に民族的な立場から慰労と激励を送り施政演説で訴えたスタンスに文政権が近づくよう促しているのだ。

 

   新型ウィルス流行のさなかでも文政権がスタンスを改める契機はなくはない。WHOが世界的なパンデミックを宣言した今、どこもかしこもマスクが不足している。

そんな中、開城工業地区支援財団金ジンヒャン理事長は、“開城工団には即時稼働できるマスク工場1つと裁縫工場が73つあり、月産600万枚のマスクと衛生防護服などを生産し全世界の需要を賄える”と主張している。

 

  すでに政府にも提言しているそうだが韓国統一部はアイディアの段階では肯定的な反応を見せながら結局は、難しいと難色を示している。

  

 

   そこにアメリカの国務省も開城工団の再開は国連安保理決議違反だとくぎを刺している。同盟か同族か、文政権が朝鮮の訴えに応えなければ北南関係の改善は一歩も進まないだろう。

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