【朝鮮新報】詳細は
茨城朝鮮初中高級学校学区内の生徒たちを対象にした「第3回セッピョル学園」(9月22~24日、栃木朝鮮初中級学校)。「セッピョル運動会」などの同胞参加型行事も企画されバージョンアップした今年の「セッピョル学園」には、生徒、同胞、関係者ら950余人が集い、盛り上がった。東日本大震災による被害で一時は中止になりかけたが、栃木県青商会が開催に名乗りを挙げ、北関東・東北の青商会、学校関係者らと協力しながら4カ月に及ぶ準備作業を経て成功させた。その過程は、栃木県青商会内部の団結力を強め、会員一人ひとりが朝鮮学校と地域同胞社会の重要性、そして青商会の役割を再確認する道程でもあった。
育まれた団結力と自信
「開催準備は大変だったけど、終わってみると何だか寂しい。青商会の仲間と毎週のように会っていたし、連絡は毎日とっていたから」と話す栃木県青商会の李永秀幹事長。「実は、自分も最初は『開催反対派』だった。栃木では無理だと思っていたから」と打ち明けた。
「第3回セッピョル学園」が栃木初中で開催されることが決まったのは、今年の6月。当時、東日本大震災の被害により過去2回行われた茨城初中高での開催が困難に。関係者の間では中止が囁かれていたが、茨城県青商会の李忠烈直前会長の「セッピョル学園はやってもやらなくてもいい行事ではない。伝統を絶やしてはいけない」という呼びかけに栃木県青商会が立ち上がった。
栃木県青商会の鄭誠植副会長は、「ある日、学校から帰宅した娘たちが今年の『セッピョル学園』の開催は絶望的、友だちに会えず残念と肩を落としていた。娘たちのように『セッピョル学園』を待ちわびている子どもたちがいると思うと、絶対に中止にしてはいけないと思った」と話す。
しかし栃木での開催が決定した当初、学校関係者のみならず青商会会員たちの間でも「栃木初中には、茨城初中高のような寄宿舎もないし、大人数を収容する食堂すらない。施設の問題を考えれば絶対に無理」「200人以上の子どもたちの安全面を保障できない」など反対意見が多数を占めていた。
だが、金基竜会長の考えは違った。
「条件的な問題以前に、青商会会員たちの気持ちが前に向いていなかった」
「セッピョル学園」開催に向けた一歩は、会員、関係者らの意識を変えることから始まった。「できないのか、やる気がないのか。できない理由があるなら、一つひとつ潰していけばいいじゃないか。何もしなければ、何も生まれない」と青商会役員らと共に会員らを直接訪ね、説得して回った。
主力会員のこうした呼びかけに会員たちの心は少しずつ動き始めた。
8月からは毎週土曜、忙しい仕事の合間を縫ってたくさんの青商会会員らが学校を訪れ、草むしりや粗大ごみ処理など施設の隅々を整備・清掃した。
9月初旬には北関東・東北の青商会の会員らが同校に集まり、使われなくなった寄宿舎を清掃して、約100人を収容できる立派な食堂に〝変身〟させた。
また、作業後には行事開催のための会議や食事会を欠かさなかった。話題は「セッピョル学園」の問題を中心に、朝鮮学校や仕事の問題など多岐にわたった。互いの考えを共有する過程で、会員同士の絆は深まり、朝鮮学校の重要性をいっそう感じるようになったという。
李幹事長は、「今回の『セッピョル学園』は栃木県青商会の内部はもちろん、茨城、群馬との連係や団結力も強めるきっかけになった。何より会員たちの中に、『栃木でもできるんだ』という確かな自信が芽生えたと思う。今ではやって本当によかったと思える」と笑顔で振り返った。
「セッピョル学園」に参加した生徒たちを対象に実施されたアンケートには、「本当に楽しかった、また来年も来たい」「青商会のアジョシたちはかっこいい、ありがとう」などの喜びと感謝の言葉が綴られていた。
同胞の期待を背負い
友だちと楽しいひとときを過ごした生徒たち
この間、栃木県青商会では開催地である学校の関係者や保護者、地域の各団体と積極的に協議を重ね、「セッピョル学園」開催にともなう問題点や解決法を共に模索してきた。
その過程で、これまで各団体ごとに活動していた青商会と学校、地域が「学校を守るため」「子どもたちの笑顔のために」という一つの大きな目標に向けつながり始めた。
栃木初中オモニ会では、「セッピョル学園」で生徒、教員の食事400人分に加えトイレ清掃なども率先して手伝った。高恭子会長は、「食事の準備だけでも正直すごく大変だった。けれど毎週、学校の掃除に汗を流す青商会の姿を見てきたから、少しでも何か助けになりたかった」と話す。
一方、栃木に長く暮らすある顧問は、行事当日、忙しく動き回る若者の姿に力をもらったと学園長に向け感謝の手紙を送ったという。手紙には「若い世代ががんばる姿を見て、元気をもらった。自分が地域で行ってきた愛族愛国活動が間違っていなかったと思った。栃木同胞社会の未来は明るいだろう」と添えられていた。
行事を成功させ、ひとまわり大きく成長した栃木県青商会に対する地域の期待は少なくない。
金会長は、「学校存続のため青商会はもちろん、各団体がそれぞれの役割をしっかり果たしながら互いに手を取り合って同胞社会を盛り上げたい。青商会としては今後、財政支援のみならず同胞ネットワークをいっそう活用し、経営者たちにとって『参加するメリットが大きい青商会』を目指したい。学校支援に限らない青商会本来の活動に軌道を戻すためにも、まずは地域の問題を各団体とともに解決していきたい」と話した。